サッカーと書評生活

サッカーが好き、本が大好きです

僕のジロ・デ・イタリア  2017年 山本元基

ジロ

山本元基著 東京書籍 2017年


ヨーロッパの「グランツール」のひとつジロ・ディッターリア(以下ジロ)、2016年のジロを完走したNIPPOヴィーニファンティーニチーム所属の日本人サイクルロードレーサー山本元基さんの、全日程・全ステージを事細かにブログに綴ったブログをまとめた本です。

ヨーロッパでは非常に人気の高いサイクルロードレースは、近年欧州のレースがライブで放映されるようになったものの、日本ではまだマイナースポーツであり日本人で国際的に活躍する選手は現れていません。そのなか著者の山本さんがジロを完走いたことは快挙ではあります。一般に日本人が好成績をあげられないのは、外国選手に比べて体格的に劣っていると思われがちです.
しかし山本さん所属チームのエースであるダミアーノ・クネゴ(イタリア)は身長169cmで体重は58kgと日本選手よりもむしろ華奢な体格ながら2004年のジロで総合優勝を果たし、また本書にあるとおり2016年のジロでも終盤まで山岳賞のジャージをキープしていました。またナイロ・キンタナ(コロンビア)も身長168cm、体重58㎏の体格で2014年のジロ総合優勝及び各レースの山岳部門の優勝を果たしています。ですから、日本人でもジロやツール・ド・フランスで勝つ可能性は十分にあると思いますし、山岳ステージではむしろ体の重い欧州選手よりも有利ではないかと思います。山本さんは本書の中でその差を練習環境の違いをあげ、日本人レーサーの若い時期からの欧州へ渡って練習をつむことを奨めています。

ところで、著者が走破したジロの各ステージはいったいどこからどこまでだったのかが全く記されていません。これはとても残念です。「第〇ステージ、開催地:イタリア」という記載だけではあまりに大雑把だと思います。書面で第4ステージからイタリアに飛んでイタリア全土を南から北にまわりゴール地点はトリノだったということはわかりますが。風光明媚な海岸、古い町や村、そしてアルプスの峠道など風光明媚で変化にとんだコースが魅力のジロです。せめて各ステージのスタートとゴールの地名、できれば全コースの簡単な地図を載せるべきでしょう。これは編集者の不手際だと言ってよいかと思います。

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「めざせ達人!英語道場」 斎藤兆史 ちくま新書

英語道場  
筑摩書房 2017年4月10日 740円

 本書は「まっとうな英語」をいかにして身に着けるかを指南する本です。

 多くの日本人が英語ができるようになりたいと思っている。しかし、中(今は小から)、高、大と10年近くも英語を勉強しているのに一向に英語ができるようにならない。そこで言われるのが「日本の英語教育が悪い」。でもこれって、自分が努力していないことを棚に上げて人のせいにしていません?

で、英語(とりわけ英会話)が「努力することなく自然となくできるようになる」ことを標榜するナンチャッテ本や教材が世に出回るわけです。しかし、英語を母語としない日本人が「楽して英語ができるようになる」なんて虫のいい方法はあり得ません。学校の授業45分を週4回程度、それ以外には英語を使うことはない。英会話教室に行ったところで、週一回1時間程度習うだけで後の時間は日本語にどっぷりつかっている。日本人は「英語を勉強する時間が圧倒的に短い(足りない)」のです。このことは鳥飼玖美子さんも、本書の著者斎藤兆史さんも異口同音に述べています。また会話だけ習ってあとはどうでもいいとういということもあり得ません。言語は「話す」、「聞く」、「書く」、「読む」すべてが大事であるととも述べています。考えてみりゃその通りです。

とはいえ、やみくもにやってところで「まっとうな英語」が身に付くはずもありません。本書は「教養ある英語」をいかにして身に着けるかを指南する本です。迷える大人の英語学習者、英語学習予備軍にそのノウハウを伝授するものです。

本格的な英語学習はこの本を読んだ後から。あとは読者がそれを実行するかにかかっています。



新書「ゲノム編集を問う」 石井哲也 岩波新書2017年

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岩波書店 2017年7月20日 780円


私、一応生命科学関連の仕事に就いているのですが、うかつにも「遺伝子組み換え」と「遺伝子(ゲノム)編集」との違いを知りませんでした。「生命科学もついにそこまで来ているのか」というのが正直な読後の感想です。例えば遺伝子のどの箇所を編集したいと思ったら、パソコン上で簡単にその場所を知ることができるんですね(そこから先の操作はさすがに素人には無理でしょうが)。

本書で筆者はDNAからタンパク質が合成される過程をその基礎から丁寧に説明し、「遺伝子組み換え」と「遺伝子(ゲノム)編集」の違い示したあと、「ゲノム編集」の最新知見技術を示します。次には、農作物、家畜そして人間を対象とした最先端のゲノム編集技術の応用について述べます。その語り口は断定的な言葉は避け事実を淡々と述べる形をとっています。

これまで、生物(生命)はDNAの塩基配列の突然変異、及びダーウィニズムによる選択・適応・分化によって種を増やし進化してきました。後年人間による農耕・牧畜が始まってからもそれを基にした選択によって種内での改良がおこなわれてきました。種としての人間(ホモ・サピエンス)の場合も同様です。進出した各地の環境に応じて形質を適応させ、南極を除く全世界に居住域を拡げてきました。しかし、いまゲノム編集技術によってそれが根本的に違った形で生命が操作される時代となってきました。とりわけ生殖医学における応用は、いわゆる「デザイナーベビー」の誕生の可能性など様々な問題を含んでいます。いま「生命とは何か」ということを改めて問い直す時期に来ているのだと筆者は本書の中で示しています。

このような遺伝子の改変は、すでに遺伝子組み換え作物登場の時点で社会の一部からは拒否反応が示されていて、畜産物についてはまだ市場に出ていないようですが、医薬品としてはその技術は利用する価値があると思います。あとは社会がどのようなコンセンサスを作り上げるかにかかっているかもしれません。しかし、これは大変難しいものとも思います。

本書の内容は興味深く、一般向けの解説書として素晴らしいものと思います。しかし決して読みやすい本ではなく途中でギブアップしようかとも思いました。その原因は本文中にやたらと出てくるSNP, ZFN, NHEJ, MSTN, PGEDタレン、クリスパーキャス、オフターゲットなどの略字やカタカナ語です。これは何とかならなかったんでしょうか?学術書であれば末尾に必ず索引がついています。ましてやこれらの語を初めて聞く素人を対象とするなら当然索引つける配慮があってもよかったのではないでしょうか。

ホモサピエンスの

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篠田謙一編、洋泉社歴史新書、2017年7月発行


前半の原人からホモサピエンスに至るまでの記載があまりに冗長で、肝心のホモサピエンスの拡散史さらには日本人のルーツに至るまでに退屈してしまいました。そのやめせっかくミトコンドリアDNA、Y 染色体DNAだけでなく核内常染色体DNAの分析結果を含んだ新しい知見がのせられているのに、まったく面白味がありませんでした。

読み終えて最後のページを見たら、人類学者・篠田謙一さんは監修されているのみで、4人のライター(人類学の専門家ではなく若いフリーライターでしょう)の分担執筆。これでは主題がボケて冗長なのは当然といえば当然。残念な作品といえます。まあ、これまでの知識を整理するにはコンパクトにまとまっているとは思いますが・・・・・・・・。

本書の優れた点はふたつ、一つは多くの人が妄信している埴原和郎氏の『日本人二重構造説』を否定している点、二つ目はつまらない箇所は飛ばして読めばよいのでちょっとした合間に読み終えることができる点です。そんなところでしょうか。

世界漫遊家が歩いた明治ニッポン 中野 明

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ちくま文庫、筑摩書房2016年11月7日、840円



”Globetrotters”といえば、私自身は世界を巡業してその妙技を披露するアメリカの黒人プロバスケットボールチーム”Harlem Globetrotters”しか思い浮かばないのですがそうではありません。

19世紀後半、産業革命等によるによる資産家の誕生、鉄道網の発展また大陸間の定期客船の就航などから、欧米において(主として英国・米国ではあるが・・・・・)世界をまたにかける旅行者達が誕生。彼らを世界漫遊家(Globetrotters)というのです。彼らの活動した時代は、ちょうど日本が明治維新で世界に窓を開き近代国家に向けて歩み始めた時期でもあった。よって日本を訪ねたのGlobetrottersもおおかったらしいのですが。残念なことにているのは、イザベラ・バードとだけ。


E.プライム、T.クック、E. レアード、C. ロングフェロー、T.ブラッセイ、A.クロウ、I.バード、J.シフetc.。筆者・中野 明氏は、これら明治期の日本を旅した有名・無名のGlobetrottersの記録を丹念に調べ上げ、読者に紹介しています。その中には当時の北海道全土をほとんど何も持たず、一人で番屋やアイヌの家に寝泊まりして、しかも途中で負った骨折をものともせず歩き通したウォルター・サベージ・ランド―のような強者もいたんですね(この人はすごい)。


とにかく面白いです。と同時に生まれたばかりの赤子から青年に成長するダイナミックな明治期の日本という国が見えてきます。あとがきに筆者は文献の入手等に苦労したものの、損得抜きに楽しく書けたと述べています。きっとGlobetrotters一緒に明治の日本を旅をしていたのだと思います。あまりの面白さに2103年に朝日新聞出版から発行されたこの文庫版の元本『グローブトロッター』まで購入してしまいました。