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サッカーと書評生活

本が大好きです。サッカーも好きです。

DNAの98%は謎 ブルーバックス

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小林武彦著 講談社 2017年10月20日発行 920円

最近書店に並び始めた読みごたえのある一冊です。 

2003年にヒトゲノム(ヒトDNAのすべての塩基配列)の解読が終了し、人の遺伝子の数もほぼ解明できました。同時にわかったことはヒトゲノムの98%はタンパクをコードしていない部分(ジャンクDNA)だということも解りました。たいていの人は「あっ、そう98%も無駄にしてるんだ」ここでおしまい。私もそうでした。

しかし近年そのジャンクDNAの部分の機能が次第にわかってきて、けっして”ジャンキー”ではないことが解明されてきています。いまや生命科学の最前線にあるジャンクDNAの研究の成果をわかりやすく解説しているのが本書です。例をあげればヒトタンパクの数の方がヒト遺伝子の数よりも多いという事実、98%の部分が何らかの働きをしていることは明白です。

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Footballista2017年11月号

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ソルメディア 2017年11月 900円

これまで日本で海外サッカーといえばヨーロッパ・サッカーとほぼイコールで、アメリカ大陸とりわけ北中米のサッカーについて取り上げられたことはほとんどなかったと思います。

最近店頭に登場したFootballista2017年11月号は、アメリカ大陸とりわ知られざる中米、特にメキシコのサッカーに焦点を当てている点で大変ユニークです。とりわけ本田圭祐がメキシコのパチューカに移籍したことと相まってたいへんタイムリーな企画であったと思います。

斬新なところは、欧州ともまた南米とも異なった、摩訶不思議なメキシコサッカーの魅力を知ることができることです。とりわけ星野智幸氏のエッセイ「陽気さと、アイロニーと メキシコに在るサッカーという日常」は秀悦です。

できれば他の中米諸国、とくにW杯の常連になりつつあるコスタリカやニューフェースのパナマのサッカーについても紹介していただきたかったと思います。でも詳しい人はいないでしょうね。

岩波新書「日本の歴史を旅する」

日本の歴史を旅する 
五味文彦著 岩波書店 2017年9月 860円


歴史はあまり得意ではありませんが、旅というテーマに惹かれました。取り上げられた旅の場所は、あまりメジャーでないところが多く意外性にあふれていました。


例えば大津。単に街道の通過点に過ぎず、あまりに京都に近いのでつまらないところかと思っていましたが、実はは京に向かう陸路・水路の結節点であり、物資のみではなく人、様々な情報が集まり、またそれを発信する重要な拠点だったことが述べられてされています。そこに松尾芭蕉を取り上げ芭蕉が「奥の細道」の発想を得たのが大津でありまた晩年を過ごしたのもそんな大津であったことが述べられています。


ほか、国東半島六郷満山と仏教文化、宇都宮餃子と東国の街道、会津の盆地文化と幕末の歴史など、人、山、食、道をキーワードに歴史の旅が4つづつ計16編考察されています。マイナーなところがほとんどですが、そんな旅もいいものかとの思いがしました。

ビートルズの英語タイトルをめぐる213の冒険 長島水際

「今更何でビートルズなの?」という感がするも、「英語タイトルをめぐる・・・・・」が気になって買ってみました。結果は”あたり”でした。

曲のタイトルの短い英語だけでいったい何が語れるのだろう?といぶかしさをもって読み始めましたが、短いタイトルに込められた英語の意味は奥が深いのだと納得しました。そこにに秘められた比喩、韻、言葉遊び、シークレットメッセージなどが解説されています。著者は翻訳家でもありますので、学校英語では絶対に習わないような文法、使い方、使い分けが解説されています。「うーん、久々に英語を勉強した」。

本書を読んで、この213曲の大半の曲を作ったLennon-McCartneyは曲作りの天才であるだけでなく、言葉の天才でもあると感じました。掲載の曲のタイトルは発売順となっている ので、この本を契機にビートルズの曲を再確認してみるのもまたよいでしょう。

続いてBob DylanやThe Rolling Stonesのバージョンも出してほしいと思うのですが、著者の好みはどうなんでしょうか?

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あき出版 2017年4月11日 1400円

アイスランド、堂々1位でW杯へ、出場国大勢決まる

日本代表が2018W杯ロシア大会出場を決めてからしばらくがたちますが、先週末行われた各大陸の予選で出場国道の大勢が決まりました。

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ヨーロッパ予選においてのいちばんの驚きは、Euro16でも活躍を見せた人口30万人のアイスランドが欧州I組で堂々の1位となり、出場を決めたことです。2002年大会のトリニダード・トバゴを抜いて人口最小出場国となりました。
欧州での驚きはほかには、前回3位のオランダがスウェーデンと同勝ち点ながらA組3位に終わってプレーオフ出場権を逃し敗退が決まったことでしょう。


アジアのプレーオフではオーストラリアがシリアを延長の末ケーヒルのゴールで勝ち越し、大陸間プレーオフに進出しました。

北中米カリブ海では、これまで7大会連続出場のアメリカ合衆国が、最終戦でグループ最下位のトリニダード・トバゴのまさかの敗戦を喫して出場権を逃しました。一方でパナマは勝利して3位となり嬉しい初出場を決めました。パナマといえば、かつてコンサドーレ札幌で活躍したデリーとマラガなどで活躍したデルレイの双子のバルデス兄弟を生んだ国ですが、一般には野球国と思われていますので驚きです。

南米ではこのところ激しいプレッシングでコパ・アメリカを連覇し、W杯でも好成績だった南米王者チリが落ちました。コパの成績とW杯予選は連動しないジンクスは今回もいきていました。


今回のW杯予選も悲喜交々のドラマを生んでいます。



カタルーニャを知るための本

 先日カタルーニャ独立投票とFCバルセロナを代表とするカタルーニャのフットボールクラブの今後の動向について書きましたが、わたがこれまで読んだカタルーニャ関連の書籍を紹介したいと思います。

1.物語・カタルーニャの歴史 知られざる地中海帝国の興亡 田沢 耕著 中公新書 
history of Catalonia
中央公論新社 2000年 780円

著者の田沢 耕さんはおそらく日本でいちばんカタルーニャに詳しい方だと思いすが、中公新書の「物語〇〇〇〇の歴史」シリーズの中では面白い方ではありません。

2.レアルとバルサ怨念と確執のルーツ スペイン・サッカー興亡史  田沢 耕著、中公新書ラクレ
バルサの歴史   
中央公論新社 2013年 820円

前者と同じ著者によるものですが、好きなサッカーのことなので、前者とはまるで別の著者によるものではと思わせるほど生き生きとした作品です。


序文にレアル・マドリーの本拠地サンチャゴ・ベルナベウでカタルーニャ独立国旗を振ったFCバルセロナ(以下バルサ)のサポーターが逮捕された”事件”(罰金刑)を紹介し、序章でスペインの歴史とその中でのカタルーニャの立ち位置について述べ、続いてスペインサッカーの歴史、さらにはスペイン内戦とサッカー、内線後民主化とサッカー界の動き、最期に新時代(今の)のバルサについて述べられています。


スペイン・サッカーを知るため、カタルーニャを知るための最高の一冊と信じます。


3.バルサ、バルサ、バルサ スペイン現代史とフットボール1968 - 78 カルラス・サンタカナ(山道佳子訳)
バルサ、バルサ、バルサ
彩流社 2007年 2500円

著者のカルラス・サンタカナ・イ・トーラスは名前からしてカタルーニャ人(バルセロナ大学の歴史学者)。原著はカタラン語です。
副題にある1968 - 78はフランコ死去前夜から死後のスペイン民主化後のスペインを意味しています。つまりは、新自治州成立によりスペインが中央集権独裁国家から立憲君主制の民主国家として再生した激動の時代を意味しています。カタルーニャ自治州ではカタラン語が州内公用語として復活を遂げました。

この中間の1973年、スペインリーグでは外国人の参加が認められ、オランダのアヤックスからヨハン・クライフを獲得したFCバルセロナが久々にリーグ制覇をしたことは、カタルーニャ自治州復活の象徴的出来事と記憶されています。中表紙にはクライフが対アトレティコ・マドリー戦で上げた伝説のジャンピング・ショート(ライダーキック)が載せられています。

4.バルサとレアル フィル・ポール(近藤隆文訳) スペイン・サッカー物語
 バルサとレアル  
NHK出版 2002年 1700円

英国フットボール・ライター フィル・ポールの作品で原題は"The Story of Spanish Football"(2001年)で、特にFC バルセロナとレアル・マドリー焦点を絞った作品ではありませんが、日本では上記の書名で発刊されました。


第4章「光と影ーバルセロナをめぐる曖昧な真実」でFCバルセロナとカタルーニャ民族主義について考察されています。

5.バルセロナ 地中海都市の歴史と文化 岡部明子著 中公新書
中公バルセロナ

中央公論新社 2010年 880円

バルセロナの地中海都市としてギリシャ・フェニキア時代から続くの歴史と文化とその独自性について述べています。それは内陸人工政治都市であるマドリードとは対照的です。
しかし内容は面白くありません。



カタルーニャ独立投票とフットボール

 

1日にスペイン・カタルーニャ自治州において、カタルーニャの独立を問う住民投票があって、独立容認派が多数(90%を)占めたということでした。

 

しかしその結果は、カタルーニャの住民全体の意向を反映しているとは思えません。カタルーニャはスペイン経済を牽引している先進地帯で、国内経済と強くリンクしています、。それゆえスペイン各地(特に、アンダルシア、エストゥラマドレ、カスティーリャ・ラ・マンチャ、ムルシア)や中南米スペイン語圏からの流入(移民)人口が多く、彼らは州全体の人口の半数以上を占めているということです。

これらのカタルーニャ語を母語としない(カスティーリャ語を話す、カタルーニャ語は何とか話せても読み書きはできない)カタルーニャ州民たちがカタルーニャの独立を望むはずもなく、また、生粋のカタルーニャ人でもスペイン国家内にとどまることを希望する人も多いはずです(つまりは人口750万人のオーストリア程度の小国となるより、人口5000万人近くの欧州の大国の一員であることを希望する、スペインという国内市場を失いたくない)。

 

彼ら非カタルーニャ人や独立を望まないカタルーニャ人は、投票に参加することを拒否したものと考えられます(投票率は40%と報じられている)。ですから、今回の結果はカタルーニャ州民の総意を反映したものではなく、デモンストレーションに近いものと思います(スコットランド独立投票とは根本的に異なる)。とはいえ、スペイン中央政府をけん制する意味や、カタルーニャの独自性を世界に示すという点ではでは大いに意義があったと思います。

 

日本人の私にはそんなことはまあどうでもいいことで、一番の心配事はサッカーです。いまスペインリーグ1部(La Liga Primera)に所属のカタルーニャのクラブ、FCバルセロナ、RCDエスパニョール、ジローナが今後どう動くか、あるいはどう処遇されるかです。とりわけ世界的強豪クラブFCバルセロナ(バルサ)今後どのような動きを取るかが気になります。

 

バルサは中央政府の違憲判断に抗議して、ホームのカムノウでのラスパルマス戦を無観客で行いましたが、カタルーニャ独立、リーグ脱退を本当に考えていると思えません。スペイン国内で一人気のあるバルサが抜けたら、リーグ自体がつまらないものとなってしまい、それはバルサ、プロリーグ機構共にメリットはありません。

スペイン代表ユニホーム姿のカタラン人G.ピケ

 

バルサにはジェラール・ピケ(Gerard Piquè)のようにカタルーニャ主義者を公言してはばからない選手もいますが、そのピケとて今スペイン・ナショナルチームに参加しているところです(かなり批判を受けているようですが・・・・・)。バルサ元主将のカルラス・プジョール(Carles Puyol)は以前のバルサのCL優勝時"Visca Barça, Visca Catalunya"とカタルーニャ語で喜びを表していました。しかしスペインが初優勝を果たした2010年のWC準決勝でドイツ相手にヘッドで決勝ゴールをたたき込んだのはほかならぬカタルーニャ人のプジョールでした。

 

よって、バルサ、エスパニョール、ジローナはカタルーニャが独立したらスペインリーグを脱退すると述べているようですが、それはないと思います。

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